株式会社サイトロンジャパンが創業60周年を記念して天体写真コンテストを開催。
250作品を超える応募がありました。厳正な審査を経て決定した各賞を天文ガイド誌上で発表いたします。
※受賞作品の掲載にあたり、本ホームページでは応募者の投稿時の写真の向きのままで掲載をしております。月刊天文ガイド2021年12月号にて本コンテストの受賞結果を掲載しておりますが、雑誌の掲載基準により北天を上の向きとして掲載しているため、ホームページと雑誌で掲載の写真の向きが異なる作品がありますのであらかじめご了承ください。
サイトロンジャパン創立60周年記念「天体写真コンテスト2021」入賞作品取消しについて
サイトロンジャパン創立60周年記念「天体写真コンテスト2021」入賞作品について、下記の理由により入賞を取り消しとさせていただきます。
また、販売予定であった印刷済みのカレンダーにつきましては販売を中止いたします。
※販売は中止といたしますが、他の掲載作品を尊重し、無償配布といたします。
該当作品
【U-29賞】、【サイトロンジャパンカレンダー賞】
作品名: 「星の虹」 関岡大晃氏
取消し理由:応募規定に反していることが判明したため(二重応募の判明)
株式会社サイトロンジャパン
【コンテスト総評】
審査員: 渡邉 晃
(サイトロンジャパン代表取締役)
たくさんのご応募をいただき深く御礼申し上げます。すばらしい作品が多く、審査は非常に困難でした。撮影技術の高い作品が多数ありましたが、斬新な表現、新しい魅力にあふれる作品に出会えたことが大きな喜びでした。U-29賞には若い世代の情熱を応援したい思いから3名を選出しました。来年以降、 第2回を開催できればと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
審査員: 沼澤茂美
(天体写真家、イラストレーター)
たくさんの応募ありがとうございました。「天体写真」という大きなテーマのもと非常に多様な作品の応募があり、いずれの作品も本コンテストに対する強い意気込みを感じました。星空風景からディープ・スカイをとらえた作品まで、それぞれの分野に特化した撮影手法やテクニック、さまざまな環境の中での工夫など、作品の撮影工程や取り組みも多様性に富んでいることを実感しました。
審査員: 中川 昇
(サイトロンジャパン 中川光学研究室 室長)
予想を上回る数の応募をいただき、 たいへん嬉しく思いました。選考をしながら「これは生半可な気持ちで臨んではいけないぞ」と何度も自分に言い聞かせるほど、応募者の情熱を感じました。とくに将来を担う若い方の応募が多く、それらの作品からは「新しい技術」と「天体写真とはなにか?」というせめぎ合いの中で作品を生み出す努力をされていることが感じられ、天文界の将来に希望の光を見出すことができました。
【大賞】 平内隆司 / オリオン座 三ツ星周辺
構図を決めるにあたり、馬頭星雲周辺のおなじみのエリアは準主役としアルニラム周辺の分子雲を主役にすることにしました。撮影は往復8時間の記憶に残る遠征となりましたが、とびきり暗い空のおかげで淡い分子雲の表現も無理なくできたと思います。(平内隆司)
【評】渡邉 晃( サイトロンジャパン代表取締役)
この作品の新鮮な構図にまずは眼を奪われました。光条をアクセントに三ツ星を大胆に対角線に配すことで構図に緊張感が生まれました。 美しく表現された燃える木と馬頭星雲の色味の違いやそれぞれの星の色の違い、豊かな諧調で繊細にとらえられた画面全体に広がる分子雲など、画面の隅々に魅力があふれており、いつまでも眺めていたくなります。高い撮影技術をベースに、さらなる表現力を発揮された優れた作品として大賞に輝きました。
【撮影データ】
2021年1月9日22時00分 タカハシε-160ED(D160mm f530mm F3.3アストログラフ) ビクセンAXD2赤道儀QHY5L-ⅡM+PHD2によるオフアキシス自動ガイド ZWO ASI 6200MM PROモノクロ冷却CMOSカメラ(ゲイン100,-10℃) クロマRGBフィルター 露出L(5分×9 コマ) R,G,B(各5分×12コマ) 総露出時間4時間40分 LRGB合成 PixInsightほかで画像処理 撮影地:三重県熊野市
【準大賞】 中西直樹 / 月齢3.7
3階を天文台とした自宅を建築しましたが、入居後は忙しく観望だけを楽しんでいました。撮影当日は冬にしてはシーイングがよく、急遽撮影することにしました。画像処理で無理をしなくても、元々の像がシャープだったので、 階調表現に気を付けながら処理しました。自宅天文台での初作品が準大賞に選ばれてうれしいです。(中西直樹)
【評】中川 昇 (サイトロンジャパン)
今回、嬉しいことに月面写真の応募が多数ありました。中でもこの作品はとくに目を惹き、私をはじめ審査員全員の目に留まりました。画像のシャープさ、諧調の豊富さ、構図のうまさなど、 基本的な撮影技術の高さはもちろんですが、欠け際のクレーター列や危機の海などが秤動の関係で絶妙な配置となっており、 貴重なチャンスをモノにした中西さんの粘り勝ちともいえます。 結果“理想的な三日月”のイメージに近い作品となりました。
【撮影データ】
2019年11月30日17時40分51秒 トミーテックBORG125SD(D125mm f750mm F6 屈折) テレビューPowerMate2.5×(合成f1875mm 合成F15) ビクセンSXD2赤道儀 イメージングソースDMK41AU02.AS 総露出時間26分15秒 露出1/30秒×450×7枚モザイク PhotoShopCS6ほかで画像処理 撮影地:広島県廿日市市
【準大賞】 永弘進一郎 / モザイクによるアンドロメダ銀河
撮影時は雲の通過が多い一方で大気の状態はよく、詳細まで写りました。腕の部分の色の変化や、周辺のハロによるH2領域のかすみ具合の差を意識して立体感を表現しました。いつも撮影の夜は朝帰り、曇りの夜は画像処理ばかりの私ですが、子どもたちと美しい妻も受賞を喜んでくました。感謝しています。 (永弘進一郎 仙台高専天文部)
【評】沼澤茂美
色彩に富み、なおかつみごとなディティールを示しているアンドロメダ大銀河。私たち審査員一同は、サイトロンのディスプレイを飾るような艶やかな作品という視点から、満場一致でこの作品を選びました。雲の切れ間を狙っての短時間の3コマモザイクとのことですが、全面にわたる画像のクオリティーは圧巻です。 高速光学系を有効に使い、適切な画像処理による美しい1枚でした。
【撮影データ】
2020 年10 月18 日00 時05分 セレストロンRASA11”(D280mm f620mm F2.2 アストログラフ) iOptron CEM70G赤道儀 iOptron iGuiderガイド鏡+PHD2による自動ガイド IDAS HeuibⅡフィルターZWO ASI294MC-PROカラー冷却CMOSカメラ 総露出時間72分 それぞれ露出4 分×6コマ×3枚モザイク Pixinsight,Astro Pixel Processorにて画像処理 撮影地:宮城県栗駒市いわかがみ平
【沼澤茂美賞】 小出文広 / 冬の大三角、滝へダイブ
この滝に最接近するためには急斜面をよじ登らなければなりません。斜面をはいつくばり、 撮影機材の設置場所も限られているため、構図を決めるのにも難儀しました。そのうちカメラがひっくり返るのではないかと、ドキドキしながらシャッターを切りました。(小出文広)
【評】沼澤茂美
星空の景観をとらえた応募作品の多くが、ソフトウェアによる数十コマ合成での作品だったことに驚きました。本コンテストでは合成による作品も選考対象ですが、私はそうした作品に違和感を覚えたのも事実です。そんな中、固定撮影で星の軌跡をとらえた本作は、 40分間の時の流れが星空にも地上風景にも感じられ、厳冬の夜の状況が伝わってきました。すばらしい臨場感だと思います。
【撮影データ】
2021年2月7日00時05分 ケンコー・トキナーAT-X 11-20 F2.8 PRO DX(11mm F3.5 で使用) キヤノン EOS X9(HKIR改造 ISO200 WB/マニュアル) 露出20分× 2コマ 比較名合成 PhotoshopCC2021ほかで画像処理 撮影地:長野県茅野市
【サイトロンジャパン賞】 ブレナー・ロバート
/ Moon, Aristarchus Plateau with Gas Planets
子供のころから宇宙船で月を周 回したかったけど、気付けばすでにおジイ。せめて宇宙船の窓から見た風景のような写真を撮りたいと思いました。(ブレナー・ロバート)
【評】沼澤茂美
サイトロンのIR640フィルターを使用した作品。シャープカットフィルターを利用した長波長の光での撮影は、大気のゆらぎの軽減に効果的ですが、波長が長くなるほどにコントラストが低下する点に注意が必要です。本作の月面は、豊かなトーンとアリスタルコス周辺のディテールが見るものを引きつけるとても魅力的なものでした。 加えて同じ焦点距離でとらえた木星と土星を加えたことも好印象をもたらしました。
【撮影データ】
2021年7月5日03時35分 セレストロンC8 XLT(D203mm f2032mm F10 シュミット・カセ) 英オライオンAtlas EQ-G赤道儀 サイトロンIR640フィルター バローレンズ1.6×(合成f3280mm 合成F16) ZWO ASI290MM 12/1000 秒×600 フレーム Autostakkert!3ほかで画像処理 撮影地:沖縄県南城市
※惑星は上記と同じ焦点距離でZWO ASI462MCで撮影
【Sky-Watcher賞】 有賀大助
/ ドブソニアン望遠鏡で撮影したNGC7293・らせん星雲
【撮影データ】
2021年8月28日【L画像】21時10分24秒 スカイウォッチャーDOB GOTO 12(D305mm f1500mm F5 ニュートン式反射経緯台) アッカーマン2inコマコレクター/レデューサー0.73×(合成f1095mm 合成F3.65) サイトロンQBPフィルター+ZWO UV/IRフィルター ZWO ASI294MM PRO(ゲイン300) 露出10秒×219枚
【RGB画像】22時20分58秒 ミザールAR-120SL(D120mm f720mm F6 ニュートン式反射) タカハシ90S赤道儀 ケンコー・トキナー製クローズアップレンズNo.4+自作コマコレクター(合成f595mm 合成F4.96) サイトロンCBPフィルター+SV BONY UV/IRフィルター D30mm f120mmガイド鏡+ZWO ASI120MM mini+ASIAIR PROによる自動ガイド ZWO ASI294MC PRO(ゲイン240) 露出300秒×6枚
LRGB合成 DeepSkyStacker、Topaz DeNoise AIほかで画像処理
撮影地:長野県松本市
【Askar賞】 橋本賢二郎 / IC1396
【撮影データ】
2021年8月6日23時12分 アスカーACL200(f200mm F4レンズ) IDAS NB-1フィルター スカイウォッチャーEQ3 GOTO-PRO赤道儀 D30mm f120mmガイド鏡+M-GEN3で自動ガイド RisingCam ATR3-26000KPA C-MOSカメラ 露出2時間(5分×24 枚) PixInsightほかで画像処理 撮影地:山形県小国町
【Player One賞】 室谷文祥 / 木星の立体視
【撮影データ】
2021年8月5日 左: 01時06分00秒/右側:01時21分54秒(撮影中心時刻)
セレストロンC8(D203mm f2032mm F10) 国際光器フォトン2倍バローレンズ(合成f4064mm 合成F20) ビクセンSXP赤道儀 プレーヤーワンNeptune CⅡ UV/IRフィルター 総露出時間12分(左右それぞれ) 20/1000秒×3000コマ×12セット 良像60%をスタック(左右それぞれ) AutoStakkert!3、Registax6、WinJUPOSほかで画像処理 撮影地:大阪府大阪市
【メーカー賞3点合評】渡邉 晃
有賀さんはドブソニアン望遠鏡と口径12cmニュートン鏡筒でらせん星雲をとらえました。短時間露出の撮影画像を多枚数スタックすることで、経緯台でもすばらしいディープ・スカイ天体作品を撮影できる好例です。橋本さんはACL200によるケフェウス座にある散光星雲の作品です。F4と口径の小さい鏡筒ですが、合計2時間の露出でvdB142象の鼻星雲を含め非常に精緻に表現しています。室谷さんの作品は木星の組写真。応募作にはほかにも優れた木星像がありましたが、惑星の自転を感じさせる本作が印象に残りました。惑星の撮影はある程度の技術レベルに達すると差を出すことがむずかしい中でアイデアの勝利でした。
【U-29賞1】 細川翔太 / アンドロメダ銀河
【撮影データ】
2021 年8 月6 日23 時50 分 スカイウォッチャーBKP 200/F800 OTA (D200mm f800mm F4) スカイウォッチャーEQ-5 GOTO赤道儀 キヤノンEOS R5(ISO 6400) 総露出時間36分(30秒×72 枚) PixInsightほかで画像処理 撮影地:新潟県胎内市胎内自然天文館
【U-29賞2】 柴田純平 / 都会の空に象の鼻星雲
【撮影データ】
2021 年5 月30 日23 時53分 タカハシFS-102 (D102mm f820mm F8) タカハシEM-10赤道儀 SV BONY SV-106(D60mm f240mm) ガイド鏡+ZWO ASI 120MM-mini+ASIAIRによる自動ガイドオプトロンL-eXtremeフィルター キヤノンEOS 6D (SEO冷却改造 ISO3200) 総露出2時間12分(12 分×11枚) AffinityPhotoほかで画像処理 撮影地: 宮城県仙台市
【U-29賞2点合評】中川 昇
柴田さんの作品はフィルターをうまく使いこなし、大都市・仙台で撮影したとは思えない星雲の写りに驚かされました。細川さんの作品は一言でいうと「ザ・アンドロメダ銀河」。一般の人が抱くアンドロメダ銀河のイメージをみごとに表現しており、飽きのこない質の高い作品です。今回応募された多くのU-29(29歳以下)の若い人たちに、今後も天体写真作品を通して宇宙の魅力を発信し続けていただければ幸いです。
【サイトロンジャパンカレンダー賞】
株式会社サイトロンジャパン:主催 月刊 天文ガイド:協力