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最新号

アイデア No.406 2024年7月号

編集: アイデア編集部

定価(税込)3,630円

発売日2024年06月10日

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イベントポスターや店舗のロゴ・パッケージのデザインなどで注目されるデザイナーの描き下ろし作品を収録! アイデア編集部 : 西

内容

特集:小林一毅 生活の図考
企画・構成:小林一毅、明津設計、アイデア編集部 デザイン:明津設計

 

グラフィックデザイナー、小林一毅(こばやし・いっき)の特集号。小林は2015 年に多摩美術大学を卒業後、資生堂に入社しクリエイティブ本部でデザイン業務を担当。退職後の2019年にはJAGDA新人賞を受賞した。現在はフリーランスのグラフィックデザイナーとして、東京を拠点に活動を続けている。

 

本特集では、小林が2023年冬から描きためてきた新作図案38点を収録した。小林の制作において、これらの図案は下絵にあたるものであり、通常は手描きの図案をもとにIllustratorでパスを起こし、デジタルでの作業を介してデザインとして完成させていく。しかし、小誌では小林がつくる「かたち」が立ち上がってくる過程や、図案を描くという行為を通じて彼がどのように身体で思考しているかに焦点をあてるため、「生活の図考」と題し、デザイン未然のものとしての「図案」を並べてみることにした。誌面の構成・デザインは、小林と大学の同期にあたり、その活動を身近に見てきた明津設計によるものだ。

 

高度にデジタル化された現代社会においては、ものづくりの現場でも合理化が進み、おどろくべきスピードで大量の表現が発生しては消費されていく。ここ数年の生成AIブームはそうした状況を後押し、一定のアルゴリズムに基づいてイメージを操作したり、他者との協働やツールの手助けを借りたりすることで、画が描けなくてもデザインをすることは可能だ。

 

造形へのアプローチがアナログかデジタルかといった議論は、デザインにおいてはもはやそれほど大きな問題ではなく、アナログとデジタルの両者が適材適所で使い分けされていけばいいだろう。ただ、誰かのために何かをつくろうとする動機や、何をもって完成とするのか、少なくとも現時点では、始まりと終わりには人間の判断が必要となる。そうした判断の材料として、わたしたちが手や目を通じて得た経験は、ビッグデータのアルゴリズム以上の確かさをもっている。

 

日々の生活のなかでの整理のつかない感情や、余分なもの、なんでもないものにふと関心を抱くような感性が、かたちの根拠となり、強度ともなる。つくること、働くこと、暮らすこと、日々わりきれない生活のなかでも実直にかたちと向き合い、手を動かす小林の姿勢から、かたちが生まれるということの尊さについて、いまいちど考えてみることにしたい。

ここだけの話

タイトル文字に書き込まれた赤字

今号の後半ページには、昨年10月に韓国・ソウルで開催された展示プロジェクト「Which Mirror Do You Want to Lick?」の様子を紹介するブックレットが綴じ込まれています。

 

 

表紙にはハングル文字でタイトルらしき文字が並んでいますが……なにやら文字のかたちを修正するような赤字やコメントが書き込まれたままです。

このハングル文字は、もともとプロジェクトの英語書体にあわせて書体デザイナーのラディム・ペスコがデザインしたものでした。

 

しかし、ラディムの専門は欧文書体のデザイン。ネイティブの韓国語話者たちから見ると、ラディムのハングル書体には線の太さやハネ・ハライのかたちに不自然さが残っていました。

書体を通じたコラボレーション

そこで、ブックレットの制作に関わった韓国のデザイナーたちは、元の書体をより自然な形に修正するための赤字を入れました。修正前後の書体を重ねてみると、その違いがわかります。

こうして完成した修正バージョンの書体は、ブックレジットの最終ページで使われています。

 

母語ではない書体をデザインする際には、同様の修正作業を繰り返しながら、より読みやすい・使いやすい書体がつくられていきます。

こうした制作プロセスが一般の人の目にふれる機会は少ないですが、ブックレットのデザインでは、デザイナーたちのコラボレーションの形跡を残すアイデアが採用されました。

雑誌紹介

1953年の創刊以来、グラフィックデザイン、タイポグラフィを主軸に、古今東西のデザインの状況を世界にむけて伝え続けるデザイン誌。毎号異なる仕様とハイクオリティの印刷により最先端のヴィジュアルカルチャーを紹介しています。専門性・資料性の高いコンテンツに加え、マンガ・アニメ,ゲームといったサブカルチャーにデザイン的な視点から迫る企画など、間口の広さも魅力です。

商品名アイデア No.406 2024年7月号

商品名(カナ)アイデア ナンバー406 2024ネン7ガツゴウ

編集者名アイデア編集部

判型A4変(縦297mm×横225mm)

【特集】小林一毅 生活の図考

 

よく噛んでから飲み込む 文:小林一毅

 

笑い声/水紋 落合川/泣き声/酢橘/葡萄/小麦粘土/落ち葉片/収集 枝/収集 コンクリート片/切紙 2023 年12 月/石垣/笹/枯草/塗り絵/スケッチブック/文字/消しゴムかす/紙屑/切紙 2024 年1 月/新雪/ままごと/レゴブロック/泡風呂/浴槽/融解/芝/草むしり/若葉/枝/蕾/時間/雨/桜/音声/ビニール袋/洗剤/水滴跡/つつじ

 

インタビュー:小林一毅 繰り返しから生まれる確かな強度
聞き手・構成:アイデア編集部 撮影:明津設計

 

作品リスト

 

 

Typojanchi 2023 と韓国タイポグラフィ学会
韓国タイポグラフィの研究と実践のいま
文:後藤哲也 デザイン:front-door 翻訳校正:ブラザトン・ダンカン

 

【綴じ込み冊子】Which Mirror Do You Want to Lick? ソウル版
編集・デザイン:展覧会キュレーターチーム 寄稿:クリス・リー 裏表紙イラスト:ラディム・ペスコ

 

綴じ込み冊子 日本語対訳 翻訳:山本真実

 

【連載】デザイン蒐集家たちの部屋
第6回:デザインアーカイヴ 「Design Reviewed」part 6
『Gebrauchsgraphik』 ― 約100 年にわたってデザイン界をアーカイヴした雑誌
文:マット・ラモント デザイン:山田和寛+竹尾天輝子(nipponia) 翻訳:山本真実

 

GRAPHIC TRIAL 2024 – あそび – 展覧会リポート

 

第26回亀倉雄策賞・JAGDA賞2024・JAGDA新人賞2024 受賞者決定

 

新刊紹介

 

インフォメーション

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関連情報