商品名アイデア No.401 2023年4月号
商品名(カナ)アイデア ナンバー401 2023ネン4ガツゴウ
編集者名アイデア編集部
判型A4変(縦297mm×横225mm)
都市の姿を変えるウェイファインディングデザインの力 アイデア編集部 : 岩澤
内容
【特集】
ウェイファインディングデザイン
都市とグラフィックの結節点
世界的なコロナ禍で人々の行動は変容し、多くの人々がそれまでの生活様式にオンラインコミュニケーションや仮想空間などのデジタル技術を取り入れながら、未曾有の危機を乗り越えてきた。期せずして、わたしたちはフィジカルとデジタル、あるいはその重ね合わせという活動領域の多様性を急速に獲得しつつあり、とりまく環境への向き合い方が変化してきている。時を同じくするように、日本では2021年に東京オリンピックを経験し、 2025年には「未来社会のデザイン」「未来社会の実験場」といったことをテーマなどに掲げる2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が予定され、メガスケールの出来事とともに都市のあり方を再考する契機が訪れている。
近い将来、都市そのものの身体性に変化が訪れるとすれば、当然、街中にあふれる標識や案内板などのグラフィックも変化を強いられるだろう。そうした状況をふまえて、都市空間、つまり環境とグラフィックデザインの関係をいまいちど明らかにしておきたい。そのひとつの方法として、本特集では「ウェイファインディングデザイン」に着目する。
ウェイファインディングデザインは空間に連続的に展開し、人々を地理的・情報的にナビゲートすることで、単に道案内をするだけでなく、人々の意識や振る舞いに影響を与えながら、その場所らしさやその都市らしさを生み出す。つまり、ウェイファインディングデザインは都市と人とをつなぐインターフェイスであり、空間の個性と体験をかたちづくる重要な役割をもつ。グラフィックデザインが受けもつ多様な領域の中でも、都市とのつながりが色濃く反映される結節点といえるだろう。
そこで、本特集では、世界で活躍する4つのデザイン事務所の実践を軸に、都市空間とデザインに関わる人々の寄稿や提言を収録した。序論では近代的なウェイファインディングデザインのパイオニアであるデヴィッド・ギブソンが、古代ローマを起点にウェイファインディングデザインの歴史とその役割の変遷をたどる。そして、都市計画研究者・岸井隆幸は、都市構造の変化が引き起こす空間認知の変容に対して、どのような方法で向き合ってきたかを江戸や新宿・渋谷といった都市スケールの視点から論じる。書体設計を専業とするSwiss Typefacesには、空間と文字の関係性と、その文字を適用するデザイナーとの協働の実際を聞いた。最後に、大阪・関西万博にも携わる建築家・豊田啓介が、フィジカル空間とデジタル空間の統合を試みる「コモングラウンド」の取り組みを視座に、これからの社会とウェイファインディングデザインの未来像を語る。
事例をもとにウェイファインディングデザインの現在地を確認しながら、論考によって過去から未来までを接続し、その先を示す道しるべを描く。本特集をこれからの都市とグラフィックデザインのあり方を考えていくきっかけとしたい。
ここだけの話
アイデアNo. 401では「ウェイファインディングデザイン」という分野を特集しました。日本語にすると「道案内のデザイン」とやや味気ない印象もありますが、建築や都市などの空間を対象にした環境デザインの領域のひとつとして、とても重要な役割を担っています。
環境デザインに関する国際的な団体SEGD(The Society for Experiential Graphic Design)では、ウェイファインディングについて以下のように解説しています。ちなみに、SEGDはグラフィックデザイナーをはじめ建築家などさまざまな職能をもつ人々で構成され、優れた作品を表彰する国際アワードなども開催しているのでぜひチェックしてみてください。
https://segd.org/
“ウェイファインディングとは、物理的な環境において人々を誘導し、その空間に対する理解を深め、体験を向上させる情報システムのことを指します。ウェイファインディングは、都市中心部、医療・教育施設、交通機関などの複雑な建築環境において特に重要性が高い分野です。建築や都市などの環境がより複雑になるにつれ、人々は地図、道案内、シンボルなどの視覚的な手がかりを必要とするようになります” (SEGDウェブサイトより)
このように、地図、案内板、誘導標識、シンボリックな看板やオブジェ、時にはデジタルサイネージやスマートフォンアプリなどなどさまざまな媒体を統合して、人々をナビゲートするしくみをつくりあげるのがウェイファインディングデザインです。
特集に寄稿いただいたSEGD元会長で、グラフィックデザイナーのデヴィッド・ギブソンさんは、ウェイファインディングの役割の中でも「空間に対する理解を深め、体験を向上させる」という性質の重要性を説きます。単に道案内をするだけなく、その場所らしさを生み出しつつ、「あっちに歩いてみよう」「この道は気持ちいい場所につながっているはずだ」とさまざまな体験を誘発するのが優れたウェイファインディングデザインといえるわけです。
例えばロンドンでは、都市の構造が複雑化し、市民でさえふだんの生活で道に迷うという課題に対して、2007年以降に街中に下図のような案内板を1500基以上設置しました。この案内板は、その場所を起点に15分で歩ける広域地図と、周辺施設をハイライトした5分で歩ける地図が示され、近隣の案内板同士がリンクして街をネットワークするものでした。
それまでロンドンでは地下鉄での移動が一般的だったのが、このウェイファインディングデザインを施してからは徒歩で街中を移動する人が増え、その地域の空間認識の度合いも高まった(迷いにくくなった)という統計もあるようです。
また、地下鉄よりも実は徒歩の移動の方が早いケースが多かった、という意外な発見もあったようです。この事例のように都市に対する認識を変え、人々の行動を誘発する力がウェイファインディングデザインにはあるようです。
今号の表紙にはドバイを拠点に活躍するデザイン事務所PenguinCubeの作品「Alserkal Avenue Arrows」を掲載しています。
これは工業地帯を文化・商業地区として再開発するプロジェクトで、地区の歴史を彷彿とさせる工業的なエレメントでつくられた矢印のオブジェが人々をナビゲートします。
シンプルで大胆なウェイファインディングが人々を魅了し、SNSの撮影スポットとしても注目を集め、今ではドバイの中でも先進的な地区として知られるようになっています。その地域の文脈を取り入れながら、空間をブランディングして新たに活気を呼び込む姿は、多様な役割をもつウェイファインディングデザインの好事例です。
このように、特集には「空間に対する理解を深め、体験を向上させる」さまざまなアプローチのウェイファインディングデザインが収録されています。ぜひご覧ください!
雑誌紹介
1953年の創刊以来、グラフィックデザイン、タイポグラフィを主軸に、古今東西のデザインの状況を世界にむけて伝え続けるデザイン誌。毎号異なる仕様とハイクオリティの印刷により最先端のヴィジュアルカルチャーを紹介しています。専門性・資料性の高いコンテンツに加え、マンガ・アニメ,ゲームといったサブカルチャーにデザイン的な視点から迫る企画など、間口の広さも魅力です。
商品名アイデア No.401 2023年4月号
商品名(カナ)アイデア ナンバー401 2023ネン4ガツゴウ
編集者名アイデア編集部
判型A4変(縦297mm×横225mm)
【特集】
都市空間のみちしるべ:ウェイファインディングデザインの考え方
企画・構成:アイデア編集部/デザイン:LABORATORIES(加藤賢策、守谷めぐみ)
・事例紹介
Pentagram Design
Snøhetta Design
PenguinCube
Travaux-Pratiques
・序論
「人」と「場所」 文:デヴィッド・ギブソン
・寄稿
都市の変遷と空間認知の変遷:東京の過去・現在・未来 文:岸井隆幸
・インタビュー
Swiss Typefaces 使用環境に配慮した カスタムフォントの開発
・インタビュー
豊田啓介 高次元空間のウェイファインディングデザイン
*
【連載】
MIRRORS 鏡の国のグラフィックデザイン 最終回:ミラー
構成・文:後藤哲也/デザイン:Sulki & Min/翻訳:ブラザトン・ダンカン/取材協力 Mat-kkal (MHTL)
佐賀、つながるデザインの点
企画・デザイン:UMA/design farm/文・構成:竹尾真由美
【新連載】
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文:マット・ラモント/デザイン:山田和寛(nipponia)/翻訳:山本真実
インフォメーション
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