プロ野球語辞典 令和の怪物現る！ 編

おかげさまでご好評をいただいている2017年刊『プロ野球語辞典』は、文と絵の最強バッテリー、著者・長谷川晶一さんの軽快な文章とイラストレーター・佐野文二郎さんの遊び心溢れる絶妙なイラストが魅力の一冊です。

そして続編である本書『プロ野球語辞典 令和の怪物現る！編』でも、もちろんそれは健在……むしろパワーアップしています！

さてここでは、本シリーズの肝であるイラスト制作のメイキングを、一部お届けできればと思います。

通常、書籍や雑誌に掲載するイラストは、編集者がそのイメージをイラストレーターに簡単に伝えて描いていただくことが多いのですが、この『プロ野球語辞典』では、長谷川さんの原稿も添えて依頼しています。

うちゅうかん【右中間】

文字通り、「ライト（右翼）、とセンター（中堅）の間」のこと。音の響きだけで「宇宙間」と勘違いし、「ボールはウチュウカンを転々……」という表現に壮大なイメージを重ね合わせた少年少女も少なくないはず。少なくとも筆者はそうだった。

例えば、この原稿のイラスト化をお願いする際は、

編集「宇宙を転がるボール、ではどうでしょうか？」

といったような、ざっくりとしたイメージをお伝えします。

すると……、

佐野さん「こちらでいかがでしょうか？」

まずは左記のような形で、ラフイラストとして描いてくださいます。

原稿に書かれている「壮大なイメージ」を佐野さんの解釈でイラスト化してくれていますね。

「こちらで、お願いします！」

と、編集者がOKを出したあと、着色して完成です。

また、

のーばんとうきゅう【ノーバン投球】

「ノーバウンド」でキャッチャーのミットに届いた投球の略称。

主に女優、女性アイドルが始球式を行った際に登場する、スポ

ーツ紙などの頻出表現。パッと見ると、「ノーパン」に見えると

ころから、読者の関心を惹こうとするあざとすぎる手法。わか

っていてもダマされる。悔しい。

では……、

編集「女優の石〇さとみさん風の女性が、始球式をしているところでどうでしょう？」

　↓

佐野さん「こちらでいかがでしょうか？」

編集「そ、そうきましたか……！ こちらで進めさせていただきます（笑）！！！」

といったぐあいです。

また、佐野さんは完成の下書きに近いラフを送ってくださるので、カラーになったときに大きく変わることはあまりないのですが、ときに、サプライズが起こることがあります。

ざる【ザル】

鉄壁の守備のことを「水をも漏らさぬ守り」などと形容する一

方、ミスが多く、穴だらけの守備のことをしばしば「ザル」と

呼ぶ。

では……、

サルに濁点が付け加えられています。

おづのまほうつかい【オヅの魔法使い】

かつて阪神の球団社長を務めた小津正次郎氏の異名。球団社

長に就任するや球団初の外国人監督であるドン・ブレイザー

を招聘し、「ミスター・タイガース」・田淵幸一をトレードに

出すなど、思い切った球団改革を断行。また「空白の一日」

騒動の際には江川卓と小林繁のトレードを行い球界を驚かせた。

では……、

おや、いなかったはずのトカゲが……。より魔法使い感が出ていますね！

ほかにも、カラーになったときにツバメが増えていたり、ライオンが増えていたり……と佐野さん流のスパイスがきいた心尽くしのイラストが満載の『プロ野球語辞典　令和の怪物現る！編』。

ぜひ、前作『プロ野球語辞典』とあわせてお楽しみくださいね！