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秘伝・鈍穴流「花文」の庭

慶応元年、近江に咲いた造園業の源流と展開・魅力を探る

編著: 近藤 三雄 / 著者: 山村 文志郎 / 著者: 山村 眞司

定価(税込)6,380円

発売日2019年04月09日

ISBN978-4-416-61812-7

内容

慶応元年に創業し、由緒正しい作庭流派「鈍穴流」の継承者である造園業「花文(はなぶん)」のルーツから現代に至る150有余年の業績(作品)と営み(生活史)を秘伝書や大福帳等から説き明かした造園家必読の一大叙事詩!

「花文」こと山村家は、五代150有余年にわたり営々と滋賀県東近江市五個荘金堂の地で造園業を営んでいる。
特に明治から昭和の初期にかけては雪月花を愛でる100指に余る「近江商人」の本邸・別荘ならびに有名社寺の作庭を手がけてきた。
その出来映えは「鈍穴の庭」として専門家からも高い評価を得ている。

本書は、山村家に代々保管されている開祖・勝元宗益直筆の秘伝書・自叙伝や庭景図(日本最古の部類の庭園設計図)ならびに歴代「花文」の代表的庭園作品39選、それらを支えた一子相伝の伝統工法や造園道具類の解説。
また、それぞれの庭園ごとに使用された庭園材料(庭石、燈籠、植木等)の種類や単価等が克明に記録されている「大福帳」も掲載。
さらには、これまで不明であった著名な近江商人の別荘庭園の所在の解明や明治期の庭師の生活史の紹介など話題満載。
それらは近代の庭園史上の資料的価値が高い。

「花文」とは…
茶道「遠州流」の中興の立役者として著名な辻宗範の弟子で、『平安人物誌』『長浜先人誌』でも紹介されている文化的万能天才、勝元宗益が開祖の由緒正しい作庭流派「鈍穴流」の継承者。

近江の地にあっても、近現代を代表する著名な造園家や昭和の初期に胎動した造園系の学協会とも数々の接点を持ち続け、昭和・平成を代表する造園設計家の戸野琢磨氏や伊藤邦衛氏とも作品づくりで協働している。
地元である「五個荘金堂地区」の美しい歴史的風土の形成・保存にも代々が尽力している。

現代においても造園の生業を支えるために、経営効率の良い石材会社を立ち上げ、グリーンインフラ時代の到来をにらみ、伝統技法を生かした低環境負荷型「花文」式環濠雨水貯留工法を開発している。

著者紹介

近藤 三雄(コンドウ ミツオ)

1971年東京農業大学造園学科卒業。農学博士。東京農業大学造園科学科教授を経て、東京農業大学名誉教授。

山村 文志郎(ヤマムラ ブンシロウ)

1971年東京農業大学造園学科卒業。花文造園土木株式会社代表取締役。

山村 眞司(ヤマムラ シンジ)

1973年東京農業大学造園学科卒業。花文造園土木株式会社専務取締役。

商品名 秘伝・鈍穴流「花文」の庭

商品名(カナ) ヒデン ドンケツリュウ ハナブン ノニワ

編著者名 近藤 三雄

著者名 山村 文志郎

著者名 山村 眞司

判型 B5

ページ数 408

はじめに―本書の刊行にあたって―
本書のねらいと内容

1章 「花文」が誕生した滋賀・近江は庭園の宝庫

2章 「花文」の由来と系譜
(1)屋号「花文」の由来
(2)「花文」の系譜
(3)「花文」歴代の人物像と逸話
Column.1 二代目文七郎を支えた弟2人の存在
Column.2 手先が器用であった四代目文七郎(勇治郎)

3章 鈍穴流開祖・勝元宗益
(1)勝元宗益(鈍穴)の人物像と業績
(2)勝元宗益の自叙伝
(3)勝元宗益『庭造図絵秘伝』等三巻に見る「鈍穴流」の奥義
1 庭造秘伝書
2 『庭造図絵秘伝 上』
3 『茶室囲庭造秘伝記 中』
4 『神道庭造並席囲寸法録 下』
5 五代目が語る勝元宗益著『庭造図絵秘伝』等三巻の特徴
(4)勝元宗益直筆の「庭景図」
1 勝元宗益の残した「庭景図」は現存する最古の部類の庭園設計図
2 5枚の「庭景図」の概要
(5)勝元宗益が残した「和歌三首」「折おり形がた」「戯画」「都から長浜への紀行文」
1 勝元宗益の残した和歌三首
2 勝元宗益の自作の「折形」
3 勝元宗益の描いた戯画
4 勝元宗益直筆の「都から長浜への紀行文」
(6)小堀遠州と辻宗範・勝元宗益とを結ぶ点と線―文化的万能天才の系譜―
(7)庭園史家村岡正の「鈍穴流」作庭の特徴と評価

4章 「花文」代々が書き記した「山村家文書」の全容
「大福帳」等が「花文」の庭造りの歴史の闇の扉を開けた

5章 鈍穴の庭、歴代「花文」の代表的庭園作品選
(1)勝元宗益から「花文」五代目までの庭園作品一覧
(2)代表的庭園作品(39選)の概要
1 宗益作 辻市左衛門邸
2 宗益作 旧藤野喜兵衛邸(又十屋敷)現・豊会館
3 宗益作 杉原玄孝邸(杉原氏庭園)
4 宗益作 弘誓寺
5 宗益作 沙沙貴神社
6 宗益、二代目、三代目作 中江勝治郎邸
7 初代、二代目作 旧中村治郎兵衛邸(現・川添邸)
8 初代、二代目作 外村宇兵衛邸(現・近江商人屋敷 外村宇兵衛邸)
9 二代目、三代目作 旧外村宇兵衛南禅寺別荘
10 二代目、三代目作 旧外村宇兵衛嵯峨別荘(現・宝厳院「獅子吼の庭」の一部)
11 二代目、三代目作 外村市郎兵衛邸
12 二代目作 外村吉太郎邸(現・近江商人屋敷 外村繁邸)
13 二代目作 旧田附新兵衛邸
14 二代目作 若林乙吉邸
15 二代目作 初代伊藤忠兵衛旧邸
16 二代目作 旧市田太郎兵衛邸
17 二代目、三代目作 小泉重助邸
18 三代目作 西澤吉太郎邸
19 三代目作 中江準五郎邸(現・近江商人屋敷 中江準五郎邸)
20 三代目作 大城神社境内石垣
21 三代目作 西村久次郎邸
22 三代目作 小江神社
23 三代目作、五代目修復 金堂まちなみ保存交流館(旧中江富十郎邸)
24 三代目作 くれない園
25 三代目作 旧豊郷尋常高等小学校校庭
26 三代目作 犬上合資会社庭園
27 三代目作 成宮道太郎邸
28 三代目作 百済寺喜見院庭園
29 四代目作 西村賢治邸
30 四代目作 西村彦五郎邸
31 四代目作 プラッサ・シガ(滋賀公園)
32 四代目作 西應寺(西応寺)
33 五代目作(有)東洋興産庭園
34 五代目作 中川清視邸
35 五代目作 寶得寺
36 五代目作 西澤義男邸
37 五代目作 太田酒造本社
38 五代目作 苑友會舘(旧松居久左衛門邸)
39 五代目作 陽明園(中国式庭園)
(3)代表的庭園作品から解る鈍穴流庭園の流儀の特徴

6章 近江商人によって育まれた「花文」の庭園業
1 「花文」の得意先で光彩を放った近江商人
2 近江商人の経営理念「三方よし」「お助け普請」「陰徳善事」と庭造り
3 近江商人と庭造りの特徴を通しての長い付き合いと奉公
4 近江商人が庭の作事にかけた経費
5 近江商人が庭の葉刈りにかけた手間と経費
6 近江商人の事業の発展に伴い、「花文」の出張所も各地に展開

7章 近代から現代に継承される作庭の流派としての「鈍穴流」の評価と価値
1 庭流派「鈍穴流」の認知度
2 日本庭園の流派の起源と展開
3 「花文」が継承した「鈍穴流」は由緒ある作庭の流派として認められるか

8章 鈍穴流「花文」の作庭を支えた伝統工法や道具類
(1)石組や鉢前、飛石の打ち様
(2)「花文」が作庭に際し、重量物の運搬、据え付け等に使用してきた道具類
(3)「葉刈り」の技術とその得意先
Column.3 葉刈りの高所作業時に身を守る、腰なわ・肩なわ・引きなわ
Column.4 剪定鋏の「きりばし(切箸)」と「蕨手(わらびて、輪鋏)」
(4)大木の移植技術
(5)「花文」独自の棕櫚縄の化粧結び

9章 庭園に使用した材料から見た鈍穴流作庭の特徴について
(1)植木(庭木)
(2)下草(低木・地被)
(3)庭石・沓脱石・飛石
(4)燈籠

10章「 山村家文書」に見る近代の庭仕事の手間賃ならびに庭園材料の値段と仕入れ先
(1)近代の庭園作業・材料の単価を検証する意義
(2)「花文」の職人の庭造り・葉刈りの手間賃
(3)幕末から昭和の初期にかけて「花文」代々が使用した庭園材料(石材)とその価格
(4)幕末から昭和の初期にかけて「花文」代々が使用した植木の種類と価格
(5)庭園材料の仕入れ先

11章「 花文」の歩みを彩る歴史秘話
(1)「花文」独特の植木屋(職人)用語
Column.5 自転車に颯爽と乗る姿が職人の自慢
(2)「山村家文書」に見る作庭に使用した植木の種類と名称
(3)「花文」歴代が重用した植木「あて、アテ、檔」とは
Column.6 「花文」の職人の仕事と生活
(4)二代目文七郎の日誌に見る明治期の庭師職人の生活史
(5)「花文」が担った滋賀等における工場庭園の先駆け
(6)山村家代々の副業 蕎麦、うどん、罫紙、あられの製造
(7)昭和の造園界と「花文」、著名造園家との協働
1 戦前の造園に関する学協会の動向と「花文」
2 昭和を代表する著名造園家との接点と協働
(8)美しい歴史的風土「五個荘金堂」の形成に「花文」の果たした役割

12章「 花文」を守り育てるための新たな挑戦
(1)建材事業・景観事業への挑戦「(株)東洋石創」の設立
(2)五代目が韓国に設立した石材会社
(3)「グリーンインフラ」時代をにらんだ新たな挑戦
―伝統技法を生かした低環境負荷型「花文」式環濠雨水貯留工法の実践―

13章 本書の成果とそこから展望できる今後の造園界が取り組むべき課題
本書の成果と今後の造園界が取り組むべき課題
おわりに―五代目が語る継承した鈍穴流作庭の奥義とは―
付表
(1)「花文」の略年表
(2)公開され、現在見学できる鈍穴流「花文」の庭一覧
謝辞
引用ならびに参考文献

お詫びと訂正

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